まったりした曲調に「おんな」を感じられる 心もよう

以前からレビューを書こうと思っていた曲がいくつかありますが、「心もよう」もまた、そのうちの一曲です。昭和48年にリリースされ、井上陽水のヒット曲として知られています。おそらく40代後半から50代以上の人であれば、ご存じの方も多いかもしれません。

 

昭和48年でのわたしと言えば、物心付くか付かないかの時であり、島津亜矢も同じようだったでしょう。(笑) ほとんど生まれたばかりの曲と言ってもいいと思います。しかし、わたしの場合、テレビ映画「探偵物語」で見聞きし、大いに印象に残りました。後年、井上陽水のファンだった女性に、そのことを話したら、非常に喜んでいました。

 

 

また、哲学者である竹田青嗣は、「陽水の快楽」という書籍を出版しました。彼も陽水ファンだったのかもしれませんが、実は先で触れた女性にプレゼントしたことがあります。もっとも古本屋で購入したものですが(笑)、通勤電車の中で読破し、陽水が好きなら分かる、などと語っていました。プレゼントをしながらも、わたし自身は全く読んでいないのですが、「快楽」という言葉が、もしかすると井上陽水の曲を端的に表わしているのかもしれません。

 

今回取り上げている「心もよう」も、快楽に含まれる要素があるかもしれません。より適切な言葉では、と思うのが、エロスになります。まったりした曲調であり、少々優雅な感じもします。気持ち良さも感じられ、独特の旋律と言えるでしょう。しかし、快楽といっても、歌詞から察するに、失恋がテーマでしょう。恋が絡むからこそ、エロスを感じられるのでしょうが、曲調のまったり感と歌詞の対比が、この曲の大きな特徴かもしれません。

 

 
 

ならば、島津亜矢が披露した「心もよう」は、どうだったのでしょうか? まず、わたしは、チャンネル銀河の再放送で視聴しました。平成14年に「BS日本のうた」で放映されたもので、今から10年以上前のものです。再放送自体も、数年前であり、書こう書こうと思いながらも、ずいぶん時が経ちました。やはり、ずぼらな追っかけであることに変わりはありません。(笑)

 

 

ともあれ、わたしの印象に残っている「心もよう」を島津亜矢が歌っていたことは、非常にうれしく感じました。本年(2015年)4月22日の「歌謡コンサート」のような「過剰さ」がなく(笑)、わたしでも許容できるような演出でした。歌唱力に関しては、言うまでもなく、伸びやかな声色が安心感をもたらしてくれます。次は何を歌うのだろう、とつい思ってしまうほど、聞き入ることもできます。「心もよう」は、リリース年からすれば、フォークに入るでしょう。もっともっと島津亜矢の歌うフォークを聞きたくなります。もちろん、フォークから派生したとも言えるニューミュージックについても、同じような思いです。

 

また、他の記事において、島津亜矢には、「はは」が似合うと書いています。しかも、身なりから「おっかさん」と呼びたくなるような「はは」です。しかし、「心もよう」では、「はは」ではなく、「おんな」を感じられます。これは、先で触れているように、曲自体がエロスと関係しているからかもしれません。まったりした感覚に、島津亜矢の力強くて優しい歌声が、彼女の「おんな」を表現するのに、適しているのかもしれません。こういうのもたまには良いかな、と生意気にも思ってしまいました。(笑)

 

 

ただし、島津亜矢にお似合いの「おんな」であれば、近松的なものでしょう。それが端的に表れているのが、「天城越え」であると思います。「心もよう」にエロスを感じるとはいえ、わたしにとっては、その対極とされるタナトスを感じることができません。エロスが生であれば、タナトスが死であり、対極というよりはむしろ一体化したもののようにも思います。色と空との関係と似たようなものでしょう。確かに「心もよう」は、恋に破れた、あるいは、恋心の薄れた者の独白と理解でき、ファンには失礼ですが、それだけとも言えます。そこに「怖さ」を感じることができません。むしろ「天城越え」の方に「怖さ」があり、男であるわたしは、ついよくここまで生きてきた、と思ってしまいます。(笑) 大衆演歌の一曲とはいえ、こういうことを感じられるものがあることは、幸いなことかもしれません。

 

島津亜矢には、情熱や情念が似合い、彼女の歌う姿勢にも、そういうものが現われているように思います。そうであるからこそ、彼女の歌う「天城越え」にエロスとタナトスを感じられるのかもしれません。これについても、別途レビューをアップできれば、と思っていますが、今回の「心もよう」と同様、まだまだ時間が掛かるかもしれません。(笑)

 

なお、島津亜矢の「心もよう」は、CDアルバム「BS日本のうたVII」に収録されています。彼女の歌唱力を感じられることは当然ですが、先のような「おんな」の部分は弱いかもしれません。機械音の強いCDのデメリットが出てしまっているからでしょうが、だからと言って、鑑賞に堪えられない、ということはありません。しかし、やはり、「BS日本のうた」で披露されたものの方が、わたしは好きです。

 

また、このアルバムは、2012年12月にリリースされています。本放送から約10年を経て収録されたことになりますが、チャンネル銀河の再放送は、リリース年と同じ頃であったと記憶しています。リンクなどを提示できないため、わたしの誤りかもしれませんが、秘蔵ファイルの作成年が同じ頃であるので、狙ったな、などと思っています。もっとも、そういうことは、商売であれば、当たり前のことでもあるでしょう。(笑)

 

 

長々と書いて来ましたが、意味のない独りよがりなことばかりだったかもしれません。しかし、何かしらご参考になったのであれば、作成者として誠にうれしい限りです。今回はこれまでになりますが、次回もまたよろしくお願いします。

 

 



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