力強くありながら優しさにも包まれる 中島みゆき 時代

新年早々、島津亜矢のカバー曲を聞くことができました。すでにご存じの方も多いかと思いますが、2013年1月6日放送の「BS日本のうた」で披露された「時代」です。わたしは、いつものように、auのTVサービス経由でオンデマンドを利用しました。正直、とても満足し、正月の餅より良いもの食ったな、と思っています。(^o^) そんな「時代」は、中島みゆきのオリジナル曲で、1975年にシングルリリースされました。おそらく、この曲で中島みゆきが、多くの人に知られるようになり、後年の「わかれうた」が大ヒットし、メジャーの地位を確立したと言えるのかもしれません。

 

 

わたしは、中島みゆきといえば、「わかれうた」からになります。「時代」は、後年になって知り、1975年当時では、小学校に上がる前でした。テレビで見ていたのでしょうが、明確な記憶はありません。もっとも、歌に目覚め、リアルタイムの記憶が、「わかれうた」であり、当時、兄のラジオを借り、歌謡番組などに聞き入っていたことを思い出します。今から考えると、何ともマセたガキだったのかもしれません。(^o^)

 

こういうことから、「時代」については、「わかれうた」程の思い入れはありません。学生になって、一時期、中島みゆきに夢中になり、「わかれうた」などに再び耳を傾け、やっぱりリアルタイムの記憶はいいなあ、などと少々横暴なことを思っていました。しかし、「時代」に関しては、その当時でも、あまり好きにはなれませんでした。「ひとり上手」も好きですが、それは学生になってからです。

 

また、「時代」は、1993年にセルフカバーされました。曲調も多少ノリが良くなり、オリジナル版より、明るさがあるでしょう。実は、当時シングルCDを購入し、今でも持っています。けれども、「時代」ではなく、「最後の女神」が目当てでした。「最後の女神」は、TBS「筑紫哲也ニュース23」のエンディングテーマで使われ、その頃のわたしは、ほとんど毎日のように視聴していました。実際数年ズレていても、「最後の女神」を聞く度、頭の中に浮かび上がってしまう映像があります。カナリアのカゴを先頭に、アリのような制服たちの隊列が、人里離れた山裾を目指している姿です。「時代」は、それ程のインパクトがなく、中島みゆきに夢中になった時期でも、あまり受け入れることができませんでした。

 
 

おそらく「わかれうた」のイメージが強すぎるのでしょう。NTV「探偵物語」で知った「アザミ嬢のララバイ」と同様、どうしようもないマイナス面を歌うのが中島みゆきだ、と感じていました。しかし、「時代」には、そういうマイナス面を感じられず、プラス面しかないように思いました。ある評論家は、中島みゆきには、恋愛の逆説性がある、と指摘しているようです。確かに、その言葉には、納得できます。しかし、わたしとしては、恋愛に限定したものではなく、恋愛を通した、人生の逆説性のように思います。

 

マイナスなことを歌いながらも、それがプラスに転じるような力があるようです。力といっても、パワフルなものではなく、リードと言えるようなものです。自然と導かれる、というのが、適切かもしれません。マイナスなことは、確かに嫌なものですが、中途半端であるとそうなるようにも思います。マイナスを突き詰めれば、結局は、プラスしかなく、実はニヒリズムの強さとは、ここにあるのでは、とも思っています。おそらく仏教の教えも、ニーチェの言動なども、こういうことに関係しているのかもしれません。

 

 

悲しいことがあると、それから逃れることも一つの方法ですが、どっぷり浸かることもまた、逃れる術のように感じます。わたしが子供の時のヒーローだった(^o^)、志村けんは、嫌なことがあると、どっぷり浸るタイプのようです。そんな時、中島みゆきの曲も聞くようです。エッセーの中では、そういうどっぷり浸かることを、一人で不幸のヒーロー、と言っていますが、主観を逃れることができないので、ヒーローであるのかどうかは、わたしには分かりません。しかし、どっぷり浸かることが、悲しみを乗り越える方法の一つであることは、否定できないように思います。(参照:志村けん「変なおじさんリターンズ」日経BP社 P.134)

 

そういえば、中島みゆきの曲を使った、志村けんのコントを、いくつか覚えています。曲で引っ張りながら、最後に落とすところは、見事だと思います。悲しいことを突き詰めると、志村けんのコントのような笑いにもなると思います。たとえば、失恋して、悲しくなって、それにどっぷり浸かっていると、いずれ、なんであんなのに、と思うようになることもあります。そうして、相手を責めるより、自分で自分がバカバカしくなり、何となく笑ってしまうようにもなります。むしろ、こうなる前に逃れようとすると、後々まで尾を引いたり、あるいは、他人に依存する傾向に陥るのかもしれません。もっとも、そんなこと、人によりけりということで終わりかもしれませんが、こういう逆説のようなことは、人の滑稽さでありながら、知恵にもつながることであると思っています。恋愛が大の苦手ですが、バツイチ経験が災いし、珍しくこんなことをお話しているようです。(^o^)

 

また、坂口安吾は、戦後間もなくの日本に向かい、「生きよ、墜ちよ」と言及していました。わたしは、70年、80年代育ちで、学生が終わった頃には、「失われた世代」の走りであり、当然、戦後間もなくの荒廃を知っている訳ではありません。けれども、坂口安吾の言葉を初めて知った時、非常に感動し、今でも好きな言葉です。極論かもしれませんが、逆説性があるからこそ生きられる、とも感じています。少々話が大袈裟で、しかも、大きく逸れた感じですが、中島みゆきの曲は、マイナスをプラスに転じるようなものが魅力の一つである、と思っています。

 
 

上記のようなことから、若い時に初めて聞いた「時代」には、自分の思う中島みゆきの魅力が感じられませんでした。ストレートな曲で、どこか味気ない感じがしました。「地上の星」も似たようなことを感じ、正直、初めはあまり好きになれませんでした。ところが、1月6日放送の「BS日本のうた」で披露した島津亜矢の「時代」には、オリジナルのストレートさがありながら、彼女の持ち味が活かされ、聞き終わった後、いやはや参った、と思いました。もちろん、上手さは相変わらずですが、島津亜矢には、独特の優しさがあると思います。力強さを持ちながらも、ほっとさせてくれるようなもので、実に心地よい気分にさせてくれます。素直になれる、というのが適切かもしません。

 

このサイトでも、すでに言及していますが、島津亜矢は、女の歌より母の歌が似合うと思います。もちろん、昔からのファンであれば、彼女の歌謡劇場などは、情念を描いたものが多く、夢中になっている人もいることでしょう。しかし、2010年からの新参者であるわたしには、島津亜矢には、女よりも母が似合い、しかも、カバー曲を自分のものにできる、プロの歌い手であると思っています。そんな島津亜矢が、ストレートさのある「時代」を歌うことで、パワフルで、温和で、安心して耳を傾けることができ、自然と元気が出てくるようにも思います。

 

「時は人を変える」

 

時間は、人を老けさせもしますが、そうであるからこそ、優しさもあるのでしょう。物事には、答えはなく、応えしかなく、一つの意味ではなく、複数の意味合いもあると思います。ならば、真実とは何か?、となれば、もしかしたら、一生分からないのでしょう。けれども、たとえそうであっても、求めたくなるのが人であり、やはり、そこに逆説性を感じます。こうなると、晶子(池田)姉さんの世界になるので、このあたりで止めておきます。(^o^)

 

とにかく、島津亜矢の「時代」には、力強さと優しさを感じ、自然と素直な気分になれるようにも思います。あまり好きではなかった「時代」ですが、島津亜矢のおかげで、この見方も変わったようです。もっとも、島津亜矢が歌えば何でも良い、と思ってしまう自分がいることも否定はしません。そうは言っても、「千の風になって」と同様、わたしの心を変えてくれたようにも思っています。

 
 

ところで、時期も時期なので、紅白歌合戦に関しては、文句を言いたい人も、きっと多いことでしょう。もちろん、島津亜矢ファンであればです。わたしもファンの一人になるのでしょうが、正直、紅白歌合戦は、どうでもいいと思っています。このサイトでも言及していますが、わたしにとっては、紅白歌合戦に出演したか否かで、歌手の評価が変わるとは思っていません。歌手の世界では、色々なことがあるのかもしれず、もしかしたら、出演しただけ、泊が付くのかもしれません。けれども、すでに大衆文化が廃れて来ている今日では、あまり価値が高いとは思いません。

 

ニュースサイトで知ったことですが、2012年の紅白歌合戦は、音楽性が高く、視聴者の評価が良かったようです。ああ、そうですか、という感じですが、島津亜矢について言えば、2012年も無理だろうと思っていたら、勘が当たってしまったようです。(^o^) わたしの憶測するところ、紅白歌合戦の選考基準は、その年に活躍したり、話題になったり、あるいは、大御所に限定されているようです。2001年に島津亜矢が選ばれたのは、母への短いメッセージなどが流行っていた頃で、ちょうどそれに似つかわしい曲が持ち歌となり、それこそ”時代”に合っていたのでしょう。しかし、今でも「感謝状」が廃れるような曲だとは思わず、おそらく、ずっと聞き続けているファンも多いかもしれません。

 

わたしも良い曲だと思いますが、さすがに、寒い日、窓にお母さんとは書きません。ついマザコン?などと思ってしまいますが(^o^)、そういう思いを抜きにしても、良い曲だなあ、と思います。2012年9月に放送された「歌謡コンサート」での「感謝状」は見事で、実は今でも、こっそり視聴しています。ただし、紅白歌合戦に興味はなくても、島津亜矢が選ばれれば、きっと視聴することでしょう。それでも、わたしの場合は、「デマンド対応」です。

 

何にせよ、島津亜矢の「時代」は、素晴しいと感じました。CDアルバム「BS日本のうた」シリーズにも収録される、と憶測しています。あまり好きな曲ではありませんでしたが、思いが改まったようです。これも、”亜矢姫”の魅力でしょうが、わたしみたいな一介のオヤジファンが言っても、あまり説得力がないようです。こうなると、方々で発言していますが、島津亜矢には、「わかれうた」と「ひとり上手」を是非歌って欲しいです。島津亜矢が歌ったら、どうなるのか?、オリジナルの中島みゆき版を聞きながら、いつも思っています。それより、中島みゆきが楽曲提供すれば、話題になるかもしれません。

 

わたしは、やはり、中島みゆきを歌う、島津亜矢が大好きです。

 

今回も、まとまりのない文章となりましたが、ここまでお読みいただけましたら、誠にうれしい限りです。新しい記事をアップし、再びお読みいただけるようでしたら、この上ない喜びです。次回もまた、よろしくお願いします。

 

 

 



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